直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

極めて限定的なオートバイ好きのため「だけ」の小説⑯

VMAX1200は基本的に無差別殺人兵器である。
その為、専門的技術を有した「誰か」がオペレーティングルームで制御しなければならない。しかし今、それが可能なオペレーター全員がここにいる。

ギャラン・ドゥウの完全展開が解除していくにつれ、VMAX1200の逞しい全裸が露わになっていく。

「至急、本部へ救援要請しろ!全員、被検体への発砲を許可する!」
現場で指揮にあたっていた回収班のリーダーであるTW200が命じた。その場にいた全員が、護身用の拳銃を抜いた。しかし彼らは戦闘員ではない。自分たちより射撃能力も格闘能力も格段に優れたFX400RらZ1000J組の猛者達をも、VMAX1200は紙屑同然に素手で虐殺した。やるだけ無駄だと誰もが認識していたが、やるしかない状況だ。
オペレーター達も覚悟するしかなかった。ヤットコや注射器を握りしめ、恐怖でとめどなく失禁しながらも、すぐそこに迫っている自の死に立ち向かうしかなかった。

ギャラン・ドゥが通常モードに収束すると、改めてVMAX1200は咆哮した。
「ヴゥイ♪ヴゥイ♪ヴゥイ♪ヴゥ~~~~イイイ~~~~~~!!マァ~~~~アッ!・・・クスゥゥゥ~~~~~!!!」
そして強者は弱者を屠殺し始めた。

「さて」
オペレーティングルームに1人残ったMT-01は、モニターに映し出される惨たらしく引き千切られたTW200の生首を気のない素振りで眺めつつ、現場からのSOS信号を無慈悲に切り、代わりにコンソールの自爆スイッチを押した。5分後には、この「元」本部も更地となる。

VMAX計画情報班のリーダーであり、山葉組本部情報局所属のエージェント・SRX-6がオペレーティングルームに入ってきた。
「司令、お迎えに参りました」
「目撃者のほうはどうなった?」
「はい。目撃したとおぼしき帰宅途中の県立高校の生徒17名、イオンタウンの買い物客34名、全て処理しました」
「結構な数だな」
「現場周辺にいて、スマホか携帯電話を手にしていた人物は無差別に殺害しましたので。やり過ぎましたか?」
「いや、とりあえずはそれでいい。後はこの建物の爆発と共にここら一帯に散布される炭疽菌が、残った目撃者も完璧に処分してくれるだろう」
「では司令、お急ぎください」
SRX-6に促され、MT-01はオペレーティングルームを後にした。

やがて、2人を乗せた乗用車が国道1号線に進入し西に向かい走り出したと同時に、背後で巨大な爆発音が轟いた。

(宗教改造人間戦闘力実証試験機・VMAX1200のテスト運用「VMAX計画・フェーズ1」は成功し、機密漏洩を防ぐための現場関係者全員と目撃者の抹殺も完了した。いよいよ計画をフェーズ2に移行できる・・・)
MT-01はそう思いながら不敵な笑みを浮かべ、国道沿いの茶畑に目をやるとタイミングを計ったように彼のスマホがメールの着信を知らせてきた。

メールに目を通すと、その内容は、実戦配備用宗教改造人間「VMAX1700」の先行量産型1号機がロールアウトした事を伝えるものであった。
MT-01は、狂喜の表情を浮かべた。

MT-01はハンドルを握るSRX-6に、
「宮城の実験場に向かえ」と命じた。
「浜松の総本部への報告は?」
「どうせ予算削減をちらつかされて、『やり過ぎだ』だの、『4stは余計なコストをかけないと使い物にならんようだ』などと、つまらん小言と皮肉を聞かされるのが関の山だ。いいか、事後承諾という便利な言葉がある。結果を出してしまえば、あの無能どもも口出しは出来ん」
「結果・・・という事は!」
「ああ。いよいよ『本命』のご登場だ」

(デカイ面している本部の汚れた2stどもに、4stの力を思い知らせてやる。お前らは時代遅れだという事を、恐怖と絶望と死もって思い知らせてやる!)
山葉組内では決して本流になれない4st派の技術開発部門の長・MT-01には、ドス黒い野心があった。

つづく