直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

極めて限定的なオートバイ好きのため「だけ」の小説⑨

日も明けきらない早朝、六本木方面から一台のワンボックス車が外苑東通りを走っていた。
やがてワンボックス車は、左折し右折してから、青山一丁目の交差点の直前で道路の左端に停車した。
 
「オイ、ここは駐車禁止だ、さっさと失せろ!」
静謐な早朝の空気を切り裂くように、ここ本田技研興業本部ビルの正面玄関脇で、警備の任にあたっていたCB-1の怒声が響いた。それに応じたのか、その不審車がゆっくりと動き出す。そしてスライドドアがちょうどCB-1が屹立する本田技研工業本部ビル正面玄関に至ると、再び停車した。
「手前ェ、おちょくってんのか!」
CB-1が声を荒げた瞬間、スライドドアが静かに開いた。そこには鈍く光る銃口がいくつも並んでいた。
(全部で6つの銃口
それがCB-1の脳裏に浮かんだ最後の言葉であった。
 
6つの銃口500SS44オートマグ、750SSデザートイーグルKX500AK47KH400MP5KR250イングラムM10、ザンザスのベネリM3が一斉に火を噴いた。
早朝の青山一丁目の交差点に何十、何百もの火薬の炸裂音が鳴り響き、CB-1の肉体はミンチとなった。
 
異変に気付いた本田技研興業の構成員が数名、飛び出してきた。そして外に出た瞬間、CB-1と同様にミンチに姿を変えた。
 
「あははははは、楽しいなあ、あんちゃん」
「あ、おれ、いい事思いついた」
「なんだい、あんちゃん?」
「じゃーん」
500SSは手にしたRPG-7を、750SSの眼前に突き出した。
「すげーあんちゃん、ねえ、ぼくにも撃たせてよ」750SSRPG-7に手を伸ばした。
「待てって、まずはあんちゃんからだよ」
 
そう言うと500SSはワンボックス車を降りRPG-7を構え、本田技研興業本部ビルの玄関に照準を合せると、躊躇なく引き金を引いた。発射された対戦車成形炸裂弾は、本田技研興業本部ビルの一階フロアを粉砕した。
 
「よーし、次はぼくの番だー」
いつの間にか500SSの隣に立っていた750SSは、粉塵が充満し、至る所から倒壊音や悲鳴が聞こえる一階フロアに、ダネルMGLの回転式弾倉に詰め込まれているグレネード弾を全弾発射した。6つのグレネード弾の炸裂が粉塵を吹き飛ばすと、そこには地獄が広がっていた。
 
遠くからサイレンが聞こえる。
「おいSS兄弟、潮時だ」KX500が二人に声を掛けた。
「えー、やだやだやだ」そう言いながら、500SSはオートマグの銃口KX500に向けた。
「まあそう言いなさんな。お巡りさんに捕まっちゃったら、もうこういう事できないんだよ。それにこれで終わりじゃないんだし。ね、とりあえずここはお終い」
500SSには右手のAK47、兄に倣って自分にデザートイーグルを向ける750SSには左手のトカレフTT-33で牽制しながら、KX500は二人を諭した。
「ちぇ、しょーがないなあ」二人は渋々了承し、ワンボックス車に乗り込んだ。
 
(全く、キチガイどものお守は疲れる)
心の中でそう呟くと、KX500はワンボック車を荒っぽく発進させ、交差点内で素早くハンドルを切りUターンすると、サイレンの音がする反対、青山墓地に向けて走り去っていった。
 
暗殺部隊の本田技研興業本部への強襲が成功したとの報告を聞いたZ1100GPは、憮然とした表情であった。
そんなZ1100GPの様子が、Z1100GP組の若頭Z1000LTDは気になった。
「どうしました親分、浮かない顔ですが?」
「いや、なんでもない。それより、本隊のほうはどうなっとる?」
「へえ、VN1500に兵隊50をつけて関東に送り出す手筈はすでに終わってます」
「そうか。しかし50で足りるか?今度のケンカは消耗戦だぞ」
「例の殺し屋集団が、どれだけ敵の頭数を減らせるか、でしょうな」
Z1000LTDのその言葉を聞くと、Z1100GPは目の前の灰皿をZ1000LTDに投げつけ、
「いいか、これはヤクザのケンカだ!キチガイどものテロじゃねえ!!」と怒鳴りつけた。
 
額を鮮血で染めたZ1000LTDは、Z1100GPが不機嫌である理由をようやく理解した。

つづく