直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

極めて限定的なオートバイ好きのため「だけ」の小説⑥

FJ1200が部屋から姿を消すと、それと入れ替わりに貧相な男が入ってきた。
そしてZ1300の前に正座すると、「いや~流石は御館様。内閣総理大臣でさえ、あれではまさに蛇に睨まれた蛙。このナイトホーク250、感服仕りました!」と頭を下げながら、おべんちゃらを言った。
 
Z1300は気のない素振りでナイトホーク250から目を背け、まんじりと庭を眺めながら、手にした扇子を「パシリ」と鳴らした。
 
「この度は御館様のご尽力により、我が大洗町原発建設中止を防いでいただき、大洗町長として心より感謝申し上げる次第でございます。これは些少ではございますが・・・」と、袱紗に包まれた5000万円の札束を差し出した。
 
Z1300は顎でZ1000STに指示した。Z1000ST5000万円を事務的に持ち上げると、そのまま部屋を出て行った。
 
内閣総理大臣が目玉の政策を取り下げる。野党は噛みつきたいが、自分たちのスキャンダルで強硬には動けない。わかるか、この意味が?ナイトホーク250町長?」
 
ナイトホークは「へへ~」と声を上げた。しかし、この時点ではZ1300の真意に気付いていない。
 
「良いか?内閣総理大臣が政策を撤回するには、それ相応の理由が必要じゃ。例えば、地域の活性化の為にと、寸暇を惜しんで原発誘致のために奔走してきた誠実な町長が、政府の原発建設中止に抗議すべく自ら命を絶つ。うむ。これなら総理が大洗原発の建設を断念しても世間は納得する」
Z1300の言葉を聞き、ナイトホーク250の顔から血の気が引いた。
「そんなわけだ。お前は死ね」
Z1300は宣告した。
 
ナイトホーク250は狼狽した。
「な、何をおっしゃられるのですか?いやいやいや~御館様、悪い冗談ですぞ。先程の5000万円と合せて、すでに2億もの金をお渡ししているじゃありませんか。その上に、この私に死ねですと?そ、そんなご無体な・・・」
2億ぽっちのはした金、総理への口利き代にもならんわ。貴様のような鼠輩の命と引き換えに、新らたに原発ができるのなら安いモノよ。それをいちいち口答えしくさって、身分をわきまえんか!」
Z1300の一喝でナイトホーク250は失禁した。恐怖と怒りと、そして生存本能が暴走し、もはや正常な精神状態ではいられない。
 
「嫌です、原発で甘い汁を啜る前に、死ぬなんて嫌です!そうだ、原発推進派の住民代表であるGN125に死んでもらえばいいんだ。そーしましょう!とにかくは私は絶対に自殺なんかしませんから」ナイトホーク250は涙と鼻水を垂れ流しながら訴えた。
Z1300はウンウンと言いながら、ナイトホーク250の訴えを聞いていた。
聞き終わると「心配するな。コイツらが万事うまくやってくれる」と言った。
 
からししおどしの音が聞こえた。その音を合図にしたかのように、ナイトホーク250の背後の襖が勢いよく開かれた。屈強な、そして凶暴で残忍そうな男たちがそこに立っていた。
Z1300の私兵「エリミネーター4兄弟」である。
 
4人の姿を見るや、ナイトホーク250は「はわわわわわわわ~」と声を上げ、立ち上がる事もままならず、四つん這いで逃げ出した。しかし、すぐさまエリミネーター4兄弟に取り押さえられた。
ナイトホーク250はジタバタと抵抗する。
「いやだ~、いやだ~、放せ、放せよ、この中途半端なアメリカンの出来損ないども!」
「お前が言うな」
そう言うと、エリミネーター900はナイトホーク250にボールギャグを咥えさせ、楽々とナイトホーク250を抱え上げた。そして4人はZ1300に一礼すると、「うーうー」ともがき続けるナイトホーク250とともに部屋を出て行った。
 
その様子を黙って眺めていたZ1300は、不機嫌そうな面持ちで、扇子を「パシリ」と鳴らした。
 
いつの間にかZ1000STが戻っていた。そして、「例の男」から連絡がきた事をZ1300に告げた。
Z1300の表情が緩んだ。

つづく