直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

極めて限定的なオートバイ好きのため「だけ」の小説⑧

Z会も一般的な暴力団と同様に、組長(会長)のZ1000Rの下にNo2の若頭(副会長)であるZ1100GPの他、舎弟であるZ1000JGPZ1100Fなどで構成されている。当然ながらZ会の舎弟は各自、それぞれ下部暴力団の組長だ。いわゆる親分と子分の封建的な世界である。
 
しかしZ会には、こうした表向きの組織図には決して姿を表さない、裏の組織が存在した。それこそGPZ750ターボが仕切る「株式会社ファカルタス」である。Z会のフロント企業1つであり、ライティング講座の開催を業務とする会社としているが、その実態はZ会の暗殺部隊である。
 
「行き過ぎた」捜査・取り調べで複数名の容疑者・その家族を死に追いやった元公安警察GPZ750ターボを筆頭に、確認されているだけでも40名以上の命を奪い全国指名手配中の猟奇殺人鬼500SS750SS兄弟、IRAPLOのメンバーとして数多くの爆弾テロを実行したKX500など、ヤクザとは一線を画した犯罪者で構成されていた。他にもKH400KR250、ザンザスといった、殺人中毒患者の吹き溜まりといった様相である。
 
確かに、Z1000Jなど人を殺すことに一切の呵責はない。それは目的のための必要な手段だから。しかし、株式会社ファカルタスの面々は殺人自体が目的である。
 
Z会は、有事の際の暗殺部隊として働く事を条件に、こうした殺人狂たちを匿っていた。しかし、あまりにも危険な集団のため、一般的な抗争では活躍の場はない。ところが、全国制覇も追い込みに入った今、この暗殺部隊に活躍の場がもたらされたのだ。
 
現在の戦況は、Z1000Jが乗り込んだ静岡は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。山葉組、・鈴木組とも、その実力は本田技研興業・Z会に遜色なく、Z会随一の武闘派であるZ1000J組でも苦戦を余儀なくされていた。静岡の抗争ではすでに、50名近くの構成員・一般市民が、凶弾・凶刃の犠牲となっていた。
 
三重県鈴鹿八耐組とNinja組の膠着状態が継続中であった。もはや、どちらが先に動くのか、どちらに先に援軍が届くのか、静かでありながら予断を許さぬ状況であった。
 
一方、愛知県に関してはZ1000R自ら、豊田市を本拠地とする宗教法人「ドライブユアドリーム教」との交渉にあたっていた。この邪悪極まりない宗教法人は、本田技研興業・Zといった闇社会最強クラスのコングロマリットはおろか、Z1300ですら迂闊に手出しできる存在ではなかった。
 
ドライブユアドリーム教の信者数は約1000万人。いくら本田技研興業やZ会の構成員が一騎当千の強者アウトローであっても、一般市民の仮面をかぶった1000万人の狂信者たちには成す術もない。1000万人から徴収するお布施の額は膨大で、資金力でも圧倒的である。そして、その組織力・資金力をもって自前の政党を結成させ、その政党が保守自由党のパートナーとして連立政権を構成しているのだ。
 
そして、山葉組とはこのドライブユアドリーム教の戦闘部隊なのである。
つまり、ドライブユアドリーム教とZ会に何らかの友好的な調停が結ばれれば、山葉組とZ1000J組は争う必要がなくなり、結果的に共闘して鈴木組を叩く可能性が生じる。
何より、ドライブユアドリーム教と同盟は避けるにしても、一定の友好関係を築く事は、本田技研興業に対するこれ以上ない圧力になる。これこそ、Z1000Rがドライブユアドリーム教と直に交渉に臨む理由であった。
 
現場が殺し合いをしている一方で、それぞれのトップ同士が握手を交わす。
それが人の世の常である。
 
こうした外交的・政治的動きを活発化させる一方、Z1000RZ1100GPに関東攻略を命じた。「関東、特に東京で派手に花火を打ち上げろ。勝った・負けたはどうでもいい。とにかく本田技研興業の連中に血を流させろ」と命じた。
 
敵の本拠地で人海戦術の消耗面戦を展開する事で、自分とドライブユアドリーム教との交渉を妨害する余力を、本田技研興業に与えないためだ。そのために、奥の手である暗殺部隊の使用を許可した。


Z1000Rの命令に、Z1100GPは無言で首を縦に振った。

つづく