直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

空と水と

オートバイにしろ、自動車にしろ、第二次世界大戦中のプロペラ戦闘機にしろ、ガソリンエンジンには2種類あります。
空冷エンジンと水冷(液冷)エンジンです。

どっちが優れているかというと、ゼロ戦よりP51Dの方が圧倒的に強くて優秀であることから一目瞭然ですな。
まあ、「第二次世界大戦中の四大傑作戦闘機」で唯一、空冷エンジンでノミネートされている点が、ゼロ戦のすごさなのです。

ちなみに、四大傑作戦闘機にゼロ戦が選ばれているのは、機体の性能や優秀さでなく、「陸上戦闘機をやっつけた史上初の艦上戦闘機」っていう単に運用方法・実績だけですから。
兵器である「戦闘機」としてはゴミですよ、ゼロ戦って。はっきり言って。中国大陸や太平洋で無敵の強さを誇れたのは、当時の帝国海軍パイロットの技量が、今のF1レーサーの3割増しという、トンデモナイ状況だったお陰です。決して、ゼロ戦自体が優れていたからではありません。

・・・と、ネトウヨや、「風立ちぬ」「永遠のゼロ」でゼロ戦信奉者になったにわか諸兄がブチ切れそうな、不都合な真実はここまでにして、ガソリンエンジンの冷却方法について考えてみるのです。

ガソリン混じりの空気をギュウギュウに圧縮して、スパークプラグで火を点けて爆発させているワケですから、そりゃエンジン、熱くくなりますな。でもって、そのまま放っておけばアルミや鉄の融点を超え、エンジンは溶けます。溶けないまでも壊れます。
そりゃアカンでしょ。

だからエンジンは冷やさなくてはいけません。
どーやって冷やしているのでしょうね?

自動車やオートバイに興味がない人は、意外とビックリされるようですが、走る事で冷やしています。そのままやん。
ジョギングしている人が、風を受け、身体を冷やしているようなものです。でも、しばらくジョギングしていると、冬でも暑くて、汗がダラダラ。

人間の体温より遥かに温度が高くなるエンジンが、それで冷えるの?と思われそうですが、自動車もオートバも人間より速く走ります。戦闘機なんて高度5000メートルで、時速500キロで飛んでたりするからまあ、冷えるでしょう。たぶん。

つーか、本当に結構冷えます。
冬とかオートバイ運転してごらんなさい。寒さで死にたくなります。ところが夏、全裸で運転してもあんまり涼しくありません。不公平ですな。

まあ、走行風ってのがエンジンを冷やす最大要因でしょうな。それは現在、新車で売っているベンツもZZR1400も一緒です。

空冷エンジンは、まさにそのまんま。すごくよく冷えるよう、エンジンの表面積を可能な限り増やすため、最大の熱源であるシリンダーやシリンダーヘッドがギザギザなのです。
でも、信号待ちとか停まっているといると、走行風はゼロですから、まったく冷えません。どんどん熱くなります。そしてエンジンはバターのように溶けてしまいます。これはアカン。

そこで技術者たちは何をしたか?何もしません。てか、どうすることもできません。
つまり、空冷エンジンは宿命として、渋滞とかが大の苦手なのです。

Z/KZ1300と同年代のカワサキ製の大型オートバイ、いわゆる「Z」って呼ばれる皆さん、空冷エンジンなのです。でもって現在、このZが大好きな方々、頭のオカシイ人の含有率が高いのです。
ノーマル状態でさえ、必要十分な現在でも通用するパワーを誇るZのエンジンに、さらにパワーを求めるのです。
お前ら、トップ・ギアのジェレミーか?

エンジンをパワーアップさせる改造としては、ボアなりストロークなりを増やして排気量を上げるのと、圧縮比を上げるのが一般的。さらにキャブやらカムやら点火系やらを交換したりするのです。
まあ、それだけやってもノーマルのZZR1400には敵わないのですが。つーか、それだけやれば新車のZZR1400、たぶん買えます。

ね、Z好きの人って頭がオカシイでしょ。
だが、それが良い。

話がそれましたが、排気量にしろ圧縮にしろ上げれば上げる程、パワーが増してエンジンはバカみたいに熱くなります。
パワーが熱に変換とか、詳しい理論やメカニズムは詳しい人に訊いていただいてください。私はよくワカリマセンので。
まあ、とにかくやたらと熱くなるのです。つまり、ノーマル状態より余計に冷やさないと、パワーアップした改造エンジン、すぐにぶっ壊れます。

で、皆さん、オイルクーラーなる部品を愛車に取り付けるのです。
エンジンオイルの経路をエンジンの外側にバイパスさせ、走行風が当たりやすい場所に、このギザギザのまな板のような物体を取り付けるのです。
そうなのです、エンジンオイルって実は、エンジンを冷やす役割も担っているのです。
そのエンジンオイルを、ビシバシ冷やしてあげて、冷却力をアップさせてあげるのです。スバラシイ。

ただコレ、走っていないと冷えません。つまり、渋滞に勝てません。
ただでさえノーマルより熱を持つ改造エンジン、渋滞に巻き込まれるとご臨終です。日本国内で使う事が前提のオートバイを、さらに渋滞に弱くしてまでもパワーを求める。

ね、Z好きの人って頭がオカシイでしょ。
だが、それが良い。

そんなワケでして、メーカーの頭の良い人々は、渋滞に巻き混まれても大丈夫なイイ塩梅の排気量やら圧縮比で空冷エンジンを設計しているのです。
そうやってイイ塩梅で作られた空冷エンジンも、100年ぐらいエンジンをかけっ放しにしておくと限りなく高温となり、超新星爆発します。つまり、コレが空冷エンジンの構造上の限界です。

てなワケでして、水冷エンジンの出番なのです。
水冷にする意味は、まあ、渋滞だけでなく、安定して適正なエンジン温度を維持するのが目的です。
要は、水冷エンジンの方が優秀って事です。

それは第二次世界大戦頃から、とっくに世界中の技術者は知っていました。
しかし当時の人類の技術力・工業力では、優れた液冷エンジンを設計し、高性能・信頼性を維持したまま大量生産するのは非常に困難でした。

だから、技術力のあるイギリスやドイツは、高性能な液冷エンジンを戦闘機に積んでいました。
一方、技術力の劣った日本は、低性能な空冷エンジン、栄エンジンの事ね、しか作れないので、それをゼロ戦や一式戦に積むしかありませんでした。

ちなみに当時、ドイツのDB601(初期型のBf109のエンジン)なる液冷航空機エンジンを、日本でライセンス生産したのですが、技術力がクソ過ぎてまともに動かない代物でした。結果、それを積んだ三式戦闘機「飛燕」の稼働率は最悪で、帝国陸軍航空隊で最も「イラナイ子」であったのは有名な話。
このイラナイ子を設計・製造したのが当時の川崎重工。でも、土井さんは悪くないのです。

アメリカは空冷エンジンが主流でした。たぶん、空冷の方が部品点数が少なく、生産性が優れていたからでしょうな。つーか、アメリカ製の空冷エンジン、イギリスやドイツの液冷エンジンに匹敵する性能を発揮し、信頼性や被弾性に優れ、人殺しの道具として最高だったみたいです。
日本を焼き尽くし、原爆投下なる史上最悪の犯罪行為を犯した、極悪非道の超高性能戦略爆撃機B29も空冷エンジンですから。

私が、第二次世界大戦中の日本、とくにその技術力や工業力をクソミソに貶すのは、こーした当時のトラウマが、日本を現在のような世界最高の物づくり大国に至らしめた原動力だと思っているからです。
そー考えると、例えば、韓国や中国とかのモノづくりを見て、「チョンやシナ畜どもは、日本の劣化コピーすらできない、人類以下の寄生虫」みたいな意見や考えは愚かです。
だって、70~80年前の日本って、今の韓国・中国レベルでしたからね。そんな日本が、現在こーなった。

要は、敵を見下すなという事ですな。

さてさて、そんなワケでして、水冷エンジンは当時、オーバーテクノロジー気味の夢のエンジンでした。
そうそう、航空機エンジンの場合、「水冷」でなく「液冷」と呼ぶのは、空を高く飛べば飛ぶほど気温が氷点下になり水だと凍ってしまうから、「水ではない何か」を使っていたからです。それが何かは忘れましたです。

ハイテクの塊で、国家存亡を担う軍用機ですらおいそれと使えなかった水冷エンジンを、民生品ごときに使えるワケありません。
てなワケで、大昔の自動車もオートバイもみんな空冷。
やがて、自動車はだんだんと水冷エンジンが浸透していきました。まあ、確かに箱の中にエンジンがあるのですから、走行風が当たり難いので水冷の方がいいでしょう。それに、自動車は社会的に存在意義のある道具ですし、高く売れるので部品点数が増えてコストが上がっても大して問題ないでしょうからな。
つーか、それだけ人類の技術力・工業力が進歩したのでしょう。

さてオートバイですが、自動車に比べ水冷エンジンを使う必然性が低いので、1970年代まで世界的に空冷エンジンが主流でした。
エンジン剥き出しですし、排気量も自動車に比べてショボいから熱的に大して問題はありません。そもそも当時のオートバイの存在意義は、「安さ」ですからね。開発費や部品点数が多くなって生産コストが上がると、販売価格が高くなって売れないですから。

でも、まあ、メーカーの頭の良い人々は、当然ながら「できればオートバイのエンジンも水冷に」とは思っていたのでしょうな。

で、1970年代になって、当時、世界で一番オートバイを作るのが上手かった日本のメーカーから、ちらほらと水冷エンジン搭載車がデビューしました。
ホンダのGLシリーズとか、スズキのGT750やRE5、カワサキのZ/KZ1300など。

う~ん、変態オートバイばかりですな。つーか、Z/KZ1300が一番まともです。

たぶん、メーカーとしても「水冷」というシステム自体、実験的な扱いだったのでしょうな当時。だから、水平対向4気筒に縦置きVツイン、750ccの2st3気筒、ロータリーエンジン直列6気筒など、「新技術にチャレンジ!」的なノリで誕生した、こうしたキワモノ達に水冷システムを採用したのでしょう。
まあどれも、「チャレンジしたけどダメでした」といった感じで消えていった、現代では失われたテクノロジーです。企画倒れとも呼びますが

あ、でもGLたちのエンジンは、形を変えて生き残っていますな。GL1800は水平対向6気筒ですし、なんかホンダの新型車で縦置きVツイン搭載車が出るとか出ないとか・・・。本田技研工業よ、貴方は何処へ向かうのか?

それはさておき、こーした偉大なる失敗作たちを糧にして、1980年代からオートバイのエンジンは一気に水冷化されていきました。そして現在、ほとんどのオートバイは水冷エンジンになりました。
中には水冷エンジンなのに、「クラシカルなデザイン」のため、空冷エンジンみたいにギザギザした外見のエンジンまであります。キライです、こーゆーエンジン。

まあ、それはともかく、新車で売っているような現代のオートバイで楽しんでいる、健全かつ正常な愛好家の皆さんは、渋滞に巻き込まれて「いつエンジンが止まるのか」なんてアホな心配をしなくて済むようになりましたとさ。めでたしめでたし。

水冷エンジンも基本的に、走行風でエンジンを冷やしています。ただし、実際に冷やしているのは冷却水です。エンジンの熱源である燃焼室周りに通路を設け、そこにウォーターポンプで冷却水を循環させ、集中的かつ効率的に燃焼室を冷やすのです。
当然、冷却水の温度は上がるので、エンジンの前に設置されているラジエターコアに通して走行風で冷ますのです。

「あれ、だったら水冷エンジンも、渋滞に巻き込まれたらダメなんじゃないの?」と思う人もおられるでしょう。

ところが大丈夫。冷却水の通路には温度センサースイッチが付いており、冷却水が一定の温度になるとラジエターコアの裏側に備え付けてある冷却ファン、まあ扇風機ですな、コレが自動的にくるくる回る仕掛けになっています。
だから信号待ちや渋滞でも、冷却水が熱くなったら扇風機がくるくる回ってラジエターコアに風が流れ、冷却水を冷やしてくれるのです。これで暑い日の信号待ちや渋滞も安心です。

私のKZ1300は水冷エンジンであり、ちゃんとこうした構造になっています。冷却水も循環していますし、扇風機もくるくる回ります。
でも、あんまり水冷エンジンの恩恵を受けていないのです。
なんでじゃい?

なんか、関係ない文章ばかりダラダラ書いてしまい、肝心なKZ1300の事にほとんど触れることができませんでした。海より深く反省。