直六国防挺身隊

母は来ました今日も来た。嫁をイビリに今日も来た。

「茶の本(THE BOOK OF TEA)」岡倉覚三著・村岡博訳

いわゆる「逆輸入書」ですな。

アメリカのボストンで、無知蒙昧・皮相浅薄を絵に描いたような毛唐共のあまりの知的水準の低さ、野蛮で幼稚で傲慢で狭量な精神性に、愕然としたと同時に憐憫の情を禁じ得なかった心優しい天心先生。
そんな天心先生が、白色土人共を教え導き、少しは人間に近づけさせてやろうと、超絶上から目線で記した東洋美術鑑賞マニュアルがこの本です。だから、原書は英語で書かれています。

私のは岩波のヤツですが、もっと現代風の口語っぽい訳もあるそうです。
でも、英語以上に漢文に通じた天心先生ですから、古めかしい文語体っぽい岩波のヤツのほうが雰囲気があってオススメですぜ。

この本を読む限り、天心先生って東洋至上主義といいますか、西洋文明に対し嫌悪にも似た不信感を抱いていたのは間違いなさそうです。
そのわりには師匠はアメリカ人。

つーか普通に考えて、誰かに強要されたのでもなく自然な成り行きで、東洋は東洋で、西洋は西洋で、なるようにしかならんてなノリで、それぞれの文化・文明を独自に発展してきたワケですからな。まあ、相容れない部分は多々ありますよ。
だから、まあ、20世紀初頭の欧米人がこの本を読んでも、おそらく日本文化や東洋思想の本質なんて理解できんかったでしょうな。
そもそも互いに理解する必要なんてあーりませんから。互いに相手を「卑しく愚かな未開人」って認識してればいいのですよ。
 
ですのでこの本、今では一般的に、日本人が自身のアイデンティティを再確認するために読まれています。

「平和で清潔で文化的に暮らしていた江戸時代の日本人を野蛮人呼ばわりして、日清・日露戦争で殺戮の限りを尽くしたら文明人認定って、お前ら毛唐はどんだけ野蛮なんだ。映画インディペンデンスデイに出てきた科学技術だけ発達した醜悪で残虐なエイリアンのような紅毛人に文明人呼ばわりされる恥辱を受けるくらいなら、日本は野蛮国のままでいい」とか、まあ、マトモな感性と教養がある日本人なら読むと痛快ですよ。
 
そーいや当時の西洋かぶれの日本の美術界の状況を嘆いて「過去がわれらの文化の貧弱を憐れむのも道理である。未来はわが美術の貧弱を笑うであろう」ってあるんですよね。
 
天心先生、タイムマシンで今の日本に来たら間違いなく憤死するな。